2022年10月01日

職人の手

9月25日、熊本から「ふちた板金工業」の社長が現場採寸のため来沖されました。捨て谷をはじめ雨切りや庇(ひさし)の屋根、出窓の屋根、サッシ周りの外額縁の水切りなどを熊本で製作し、現場で取付してもらう仕事です。

沖縄でも建築板金の職人さんを探しましたが、指定のカラーステンレス0.35o厚に唐草を付けて加工のできる人は右から左にはいませんでした。そこでこのままなら技術が継承できないため、取付時には沖縄の板金屋さんも一緒に仕事してもらうことにしました。

板金工事の職人さんは手の握力が強いと言われています。ハサミを使う手仕事だからです。せっかくなので熊本と沖縄の板金屋さんの手を見せてもらいました。

DSCN5716_R.JPG


【沖縄の多嘉板金工業の社長の手です。】

DSCN5719_R.JPG


【沖縄のふちた板金工業の社長の手です。こぶはありませんが、指の周りの筋肉で固まっていました。】

DSCN2297_R.JPG


DSCN2530_R.JPG


DSCN2518_R.JPG


DSCN3465_R.JPG


【上から捨て谷入れ。瓦下の樋。その端部。箱棟周りの捨て谷(2重3重に捨て谷が入ります。特に瓦下の樋はふちた板金工業のお父さんが編み出した技術だそうです。】

27日採寸を終えて帰られる前、どこにも行っていないとのことだったので「米軍嘉手納飛行場」に連れて行きました。新しくなった道の駅・かでな。4キロメートルに及ぶ東洋一の滑走路を持つ嘉手納空港。常時100機が駐機しています。「広い!」と言ってしばらく眺めていました。

DSCN4377_R.JPG


DSCN4385_R.JPG


【体重90キログラムの私が小さく見えます。高校時代は柔道でならした体格。柔道3段だそうです。こんな大きな人がミリ単位の仕事をします。】

DSCN5918_R.JPG


【スロープ上の水平庇。そぐ横に勾配付きの庇がつく予定です。】

DSCN6010_R.JPG


【ヤードではその加工が進んでいます。屋根勾配は3寸ですが、スロープと同じ1寸2分の勾配のつく庇です。なかなかむずかしい・・・。】

DSCN4395_R.JPG


【前例があるので再確認のため空港近くの現場を見に行きました。これもふちた板金工業の仕事ですが、亡くなったお父さんが施工されたものです。】

板金に限らず、日本の伝統技術はすたれつつあります。なんとか歯止めをかけないと、このまま消滅します。そこで伝統木造技術を継承し、日本独自の木の文化を後世に伝えるために、沖縄で職人同士のネットワークを立ち上げたいと考えました。

なぜなら今でもノミやカンナを使って仕事をする大工さんが極端に減っているからです。現在はツーバイフォーやプレカット工法などが台頭し、手仕事で木組みをする機会がほとんどありません。簡単に言えば人材不足。ひとり親方が多く、ネットワークも貧弱です。

伝統建築のできる大工さんを一元的に捉えて仕事の分配、技術の研究、後継者の育成などを無報酬で行っていきたいと思っています。日本のすばらしい木造技術、木の文化を通して日本人の心がよみがえることが目的です。仲間が揃ったらまた記事としてアップします。
posted by 塾長 at 13:15| 建築