2011年03月06日

家づくりに、時を刻めるか?

 この20年で、設計のCAD化が進みました。CADソフトを利用し、意匠図も構造図も簡単に書けるし、消せます。データとして移動もできるから、日本国(世界)じゅう、一瞬にして図面が行き来します。
 木造住宅も構造図をコンピュータに入れると自動的に読み取り、継ぎ手や仕口を機械で簡単に作ります。設計も施工も、コンピュータで処理されるのが住宅建設の主流です。

重ねほぞR.jpg


 【手刻みを象徴する柱の「重ねほぞ」。プレカットでは5センチほどの短ほぞ。重ねほぞの長さはは約45センチもある。このホゾが、敷桁・小屋梁・軒桁を貫通する。接合面の多さが、自然力を吸収し、家にかかる力を分散する】

 コンピュータや機械で簡単にできると、人間は家を粗末に扱うようになります。食べものも同じです。昔は「お百姓さんが、1年かけて一生懸命お米を作ったんだよ。感謝して頂きなさい!」・・・説得力がありました!
 同じことを言っても、現実に耕運機で耕し、田植え機で田植えし、除草剤や化学肥料を入れて育て、機械で収穫している農業をみんな見ているので、言葉に力がありません。

 すべての世界が同じように機械化、科学化されていて、しかも大量生産されるので、モノを大切にしなくなりました。当たり前と言えば当たり前です。

隅木の反りR.jpg


【自然界には直線はない。自然素材を使って作る木造にも完璧な直線はない。隅木には垂木の成の1.5倍、上に反らせてある。隅が下がって見えないためと、瓦の重みで隅木を下がりにくくするため。この微妙な技は大工職人にしかできない。】
 
 手書きの図面は、同じものは作れないので、「取扱い注意」です。それを参考にして作られる伝統構法の家も手作りなので、そこに住む人は大切に使うようになります。
 悲惨な事件が後を絶ちませんが、根本的なところに手が入っていないからだと思います。それは、結果的に「命」を粗末にすることにつながっています。

小屋裏R.jpg


【沖縄で初めて組まれた2階建て寄せ棟の折置き組み。隅角部には隅梁が通り、隅梁から投げかけ梁を軒に向かって架け、母屋を受ける。複雑な組み手が、家の強さと寿命を高めていく】

 「命」さえも、簡単に作れる!という風潮があります。子どもが殺された!・・・「また、作ればいいじゃないか!」という感じです。
 親は子どもを育てているように言いますが、実際はどうでしょうか?世の親は、出産は病院に任せ、ゼロ歳からは保育園に、その後は小学校に、放課後は学童や塾に預けるので、「育児」などほとんどしていません。

 たまに家族が揃っても、居間の中央に座るテレビの画像に集中。黙ってテレビに注目。家族の会話もありません。
 このような暮らしの中で、どれだけ「モノは大切」と言っても効き目がありません。やっぱり、苦労して家も食べものも作ることです。そして、子育ても他人に任せず、責任を持って育てることだと思います。

玄関格天井R.jpg


【玄関の屋根裏の格(ごう)天井。左に見えるのは桝組み。天井板は無節の杉板。格縁(ごうぶち)には銀杏(ぎんなん)面を施す】

 一生懸命、現場で職人さんが労働している姿を見ると、家は粗末にはできません。数十年かかって大きくなった木や、苦労している大工さんの仕事ぶりを目の当たりにすると、傷でもつけようものなら「罰が当たるぞ!」の言葉が効きます。

 そのような意味でも、手刻みの家:伝統構法は人生の教材になります。

下見板打ち1R.jpg


【外壁の下見板張りが完了。下見板は杉板を現場で焼いた。表面炭化は防虫・防腐効果が目的。乾燥すれば下見板が縮み、外部の空気が壁内に流れ込み、湿気が多い日は、微妙に膨らんで湿気を含んだ空気をシャットアウトする。軒の出は90センチだが、雨当たりが家の下部に当たることや景観上も落ち着くので、この仕上げとした。下に見えるのは、ヒノキの二重土台とその間を生かした可動の無双窓(床下換気孔)】

 手書きの設計者も設計図には思い出が深く、その時々の時が刻まれています。鉛筆の芯で全体が黒ずんだり、消しゴムの跡が残ったり・・・。
 大工さんも、考えた末の仕口の出来上がりを見て喜んだり、差し合わせをしたら合わなかったり・・・。大工さんは木も刻みますが、同時に時も家に刻み込んでいきます。

 機械に依存した木材には、時は刻み込めません。吟味して決めた部材一本一本に墨を付け、それをもとに刻み込む伝統構法は、棟上げの部材探しの時、差が出ます。自分で墨付け、切り込みをした部材は特徴をよく掴んで覚えているので、見つけやすいのですが、プレカット工場に依頼した部材では、同じように番号が打ってあっても、自分で取り扱っていないので分かり辛いのです。

 それは、家自体の愛情にも影響します。機械加工は確かに寸分違わず完成し、手刻みは、切り込み材が現場で合うかどうか心配です。ピッタリ合って当り前と、合うかどうかわからないのは、精度的には機械加工が勝っているようですが、目には見えない「愛情」の観点からすると逆の展開となります。果たして、施主や作り手からどちらがよいのでしょうか?

DSCF8181RR.jpg


【南側から見た工事中の住宅。だんだん家らしくなっていく。これらの材料の総量は約100立方メートル。家一軒分を九州からトレーラーで運びこんだことを考えると、壮大な計画ではある】

 時を刻めない家と、時を刻む家。愛情の希薄な家と愛情たっぷりの家。出来上がった住宅に時が刻めるかどうかまで考えると、家の作り方は子どもの成長、家族の人生まで影響が出てきそうです。

DSCF8252RR.jpg


【3月6日、木材を納材した九州・熊本の合志林工社一同様が、現場研修に見えた。ただ、木を伐り、製材して渡すだけではなく、その後、どのように使われているかを確認することは重要なこと。今後も、産地一体の取り組みが必要なので、お互い課題を出して解決したいと考えている。なお、当現場では、内装に沖縄産の木材を多用しているので、今後はそれも紹介していきたいと考えている】
posted by 塾長 at 22:53| 建築