2011年03月15日

津波から学ぶもの!

 未曾有の被害をもたらした東北地方太平洋地震。しかし、阪神・淡路大震災の時も、そう言われたように思います。新聞の投稿欄には、「自然の脅威」とか「自然の猛威」とかが並んでいます。
 「人からコンクリートへ転換しろ!」という批評家もいました。まったく、自然を理解していないと感じます。

 地震も津波も地球自然のひとつです。台風だって豪雨だって当たり前の話。なんでもあり得るのが、地球の自然です。
 戦後、西洋から伝播した人間中心主義が日本に定着しました。一神教のなかでは、自然は人が造ったもので、人と自然の関係は人>自然です。

 日本は古来より四季を持つ穏やかな自然と接していました。宗教観は「八百万(やおよろず)の神」がおわして、「森羅万象(しんらばんしょう)、神々宿る」。従って、人=自然、人<自然の関係です。
 ところが、この数十年間に自然観や宗教観に変化が起こりました。自然宗教や先祖宗教がなりをひそめつつあります。

 近代の日本は、人間中心、自己中心の考えのもと、海を埋め、山を削って快適で便利な住まいを建設しました。海や山のなかにいる無数の命=神様を無視して自分たちに都合のいい空間を確保しました。
 本来、建ててはいけないところに家を建てました。この結果が、津波被害です。がけ地の真下に家を建てれば、崖くずれが起こるのは当然です。

 山の稜線には神様が宿るとされます。ここは分水嶺です。家を建ててはなりません。ところが、沖縄に限らず、海が見えるとか、見晴らしがいいということでこれを平坦に均し、家を建てています。特にゴルフ場やホテルが多いようです。

 今回は、役所が海抜ゼロメートルに近いところにあって、建ものごと流れて行政機能が寸断している所があります。
 昔はお城、今、役所です。これらは津波などの被害を受けるような場所に建ててはなりません。人が集まるのに便利だから・・・、広い道ができるので、干拓地がいい・・などが理由です。

 しかし、昔のお城はみんな小高い場所に造られています。数年前住んでいた旧国鉄矢岳駅の駅長官舎(明治42年建築:国の登録有形文化財)は、駅と同じ標高540メートルにあります。駅とは百数十メートル離れていて、駅が一望できます。裏に山があり、台風の風を受け止めます。駅から歩くと川を渡り、再び小高くなっている所なので、洪水の危険もありません。雷は裏山のモミの木が受けてくれます。

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【国の登録有形文化財に登録した旧国鉄矢岳駅駅長官舎。小高い所に位置している。井戸もある】

 このように、昔の人は地形を考えて建ものを造りました。現代人の自然観が被害を大きくしたように思います。

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                          【裏山とモミの木が家を守る】

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 【明治生まれの百年住宅に隣接して建てた離れ。心柱が地震や台風の自然の力を吸収・分散する】


 徳島県にある田中家(国の重要指定文化財、実際、住んでおられます)は、氾濫する吉野川の濁流に向かって、船の舳先(へさき)のように尖らせた石積みをして敷地をかさ上げし、納屋の梁にはボートが吊られています。また、それ以上の水が来た場合は、天井を打ちぬいて茅の屋根に家人は登り上がります。これが浮力でぽっかり浮かんで船になり、命だけは助かるようになっています。

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【吉野川に向かって石積みし、敷地をかさ上げしてある。一番先は船の舳先の様にとがっている】

 まさに「自然との共生」です。

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【石垣を越えてきたら、ボートで逃げる】

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【最後は天井を打ちぬいて屋根に上がり、かやぶきの屋根を船にして逃げる。先人の知恵は自然に逆らわない】

 わが家も大型台風が来たら「逃げるぞ!」と言っています。これは恥ずかしいことではありません。所詮、自然の力には勝てない、と思っているからです。
 現代建築は、自然に打ち勝つ強度を家に求めます。そもそもそれは人のおごりと思っています。地殻変動や火山の爆発。人間の力は到底及ぶものではありません。

 人間は向かっていくばかりが能ではありません。時としては逃げることも必要です。津波で海に流された方が、木材に乗って救助されたニュースを見ました。田中家を思い出しました。我が家には、海水浴で使う浮き袋がお風呂場に常にあります。他にもローソクやライター(煙草のみのためたくさんある)、ラジオ(テレビはないが・・)があります。

 食べものは飼っているニワトリやニワトリの卵、食べられる野草があります。水は井戸が2本あります。地下水もすぐ横を流れるし、水源地は歩いて3分です。人や物の運搬するリヤカーや馬もいます。タキギも床下や軒下にあります。
 危機管理能力が問われます。家づくりも自然と一緒に考えなくてはなりません。

 今度の地震や津波で何を学ぶか。それぞれ考え方があると思いますが、私は、自然とどのように付き合うか、が一番の教訓になっています。

 被害に遭遇されて命を落とされた方々のご冥福をお祈りするとともに、一日も早い復旧・復興が進むことを望んでいます。私ができることは微々たることとは思いますが、何らかの手助けをしたいと考えています。合掌。
posted by 塾長 at 15:06| 建築