2011年06月01日

地震・津波・台風・・・

 台風2号が沖縄本島をかすめて通り去りました。あちらこちらからお問い合わせをいただき感謝申し上げます。お陰さまで、わが家を初め、これまで設計した伝統構法による木造住宅は無被害でした。

 特に、宮古島市の平坦地に建てた住宅は、台風が直撃したので少しだけ心配をしましたが、「あのくらい(風速50m/秒)では、大丈夫と思っていた」との施主の声を電話で聞いて、安心しました。 先日引き渡した沖縄市の住宅は沖縄初の2階建て伝統建築でしたが、こちらも安泰でした。

北面2採用.jpg


              【台風一過。伝統的な構法で建てた木造2階建ての住宅。柔と剛、長寿と循環の要素を併せ持つ】

 台風が来たころ、法隆寺修復、薬師寺西塔などの棟梁を務めた西岡常一(つねかず)さんから聞き取り、編集された「木に学べ」という単行本を読みました。
 飛鳥時代に建てられた法隆寺は1400年の歴史がありますが、古いだけならそこらの石の方が古い。石と違うのは、人が作った建築で長生きしていること。そこで改めて、建築には自然との共生が不可欠であることを認識させられました。

 木は自分で動けないから、風や水、太陽などの自然の力(恵み)に対してジッと我慢しながら成長しなければなりません。だから、力に対応して癖が生まれる。その癖を読み切って建築材として生かさなければならないが、さて、現代はどうか?木の癖を読み取る技術者が何人いるのでしょうか?西岡棟梁からのメッセージは説得力があります。

 木や土などの自然素材を鉄筋や鉄骨、コンクリートのような原材料と一緒にしてはいけません。化学的に調合し、科学的な強度で数値化することは、木造では無理です。生まれも育ちも一本一本異なるからです。
 材料もそうですが、施工精度や施工法でも相当な違いが出ます。そこらをまったく考えていないのが建築基準法の規定や住宅支援機構の仕様書ではないかと思います。

 地震や津波、台風などは地球自然の現象のひとつです。この時発生する強大な力にまともに戦って勝つわけがありません。かかる力を吸収・分散し、弱小化する施工法や自然素材の持つ力を最大限生かす技術、また、建った後もチャンとメンテナンスができる環境をつくること、住宅なら自然に沿った暮らし方をすることなどが、家の長寿につながります。

 台風前に偶然、わが家の座敷棟前のクワノキに「キノボリトカゲ」を見つけました。家を建てるために山だった敷地に入った時にも、キノボリトカゲを見かけました。
 地形・植生を改変しない設計をしたので、開発はしたものの穏やかなアクション(働きかけ・具体的には礎石基礎)だったので、リアクション(反応)はさらに穏やか、結果的にコアクションとして自然との融和・調和が生まれると言うことが、帰って来た固有種のキノボリトカゲで現実のものとなりました。

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                 【5年前、建築のため木を伐採する時、敷地内で見つけた準危惧種のキノボリトカゲ】

帰って来たキノボリトカゲ1.jpg


                        【帰って来たキノボリトカゲ。アクションが穏やかだと、リアクションはさらに穏やかになる。ゆっくり、手仕事で進めたため生きものも、徐々に移動できた】

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                【地形を変えず、土壌生態系を守る。(礎石基礎と伝統構法による住宅)】

 床面積50u以上は布基礎にしなければならないように建築基準法はなっています。一般的にはベタ基礎の上に布基礎をしてしまう設計が多いのですが、私は極力、床下にコンクリートは打設しません。それは、土壌の生態系を重要視しているからです。

 台風の後、シロアリが一斉に大発生しました。シロアリは走光性があるので明かりに寄ってきます。そこで活躍するのがヤモリです。

舞うシロアリ.jpg


            【走光性のため明かりに寄って来るシロアリの大群。恐れることはない。】

「待ってました!」とばかり、仲間が何匹も「エサ」を求めてやってきます。身構えして待った後、「パクリ、パクリ」と食べます。

2匹のヤモリ.jpg


                           【待つヤモリ】

シロアリをヤモリが食べた瞬間.jpg


                   【ヤモリがシロアリを捉えた瞬間。まだ、シロアリの羽が口元に残る】

 シロアリは家の存続のためには敵かもしれませんが、シロアリはヤモリが天敵です。強そうですが、羽が外れると、結構弱いものです。近くにはアリも待っています。もうひとつの天敵は、無数のアリです。アリはすぐ食べずに、アリの巣にみんなで運びます。

シロアリをゲットしたアリ2.jpg


【シロアリをアリが襲う。シロアリ退治に強力な殺虫剤を使っても、薬に慣れて強くなるだけ・・・。土壌に使えば土壌汚染、人間にも不健康で悪影響。目視できる環境と生態系保全が必要】

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【ゲットしたシロアリをアリさんは巣まで運んでくれる。ありがたや、ありがたや。ヤモリは食べてくれるのは有難いが糞を残す】

 シロアリ対策は防蟻剤で木材を処理することではなく、シロアリの天敵を家に住まわせて置くことでしょう。そのためには、自然と断絶・疎外しないこと。床下をコンクリートで埋め尽くすとアリも住めません。開口部を木製建具にしておくとヤモリもアリも隙間からはいてきますが、実はこれが自然生態系を通して家を守ってくれるのです。

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【こう配のある敷地。しかし、平らにして土壌生態系を変えず、地形に合わせた設計とした。人間だけでは生きていけないのが地球社会。自然との共生は建築士が進んで取り組まなければならない。そうでないと、建築を通した自然破壊者でしかない】

 加えて、床下や天井裏に人が入れる空間を計画しておくことです。点検できない家は、シロアリが来ても分かりません。常に監視の目を光らせることが、シロアリ対策だけでなく台風や豪雨対策でも大事で、このことが自然を意識させ、自然や生きものとの共生はどうしたらいいのかということを考えさせるきっかけになります。その意味では、伝統的な住まいづくりは、子育て、人間教育などの教材にもなります。

 震災・津波のあとの復旧・復興が連日ニュースで伝えられていますが、仮設住宅の数や期日、インフラ復旧よりも大切なことが忘れ去られています。このような混乱期こそ冷静に将来像を見つめることです。
 自然の大きな力がまた発生した時どうするのか?普段の暮らしぶりをどう変えるのか?いつまでもエネルギーを浪費する暮らしをどこまでも続けるのか?
尊い命を犠牲にしないために、もっと目先のことより、日本の将来像を見据えた政策を作らなければならないと思います。それが政治家の役割と思います。

建築の専門家ももっと社会性を身につけて行動すべきです。自然を通した日本的は自然観の構築や危機管理意識の向上をこの機会にマスターして欲しいと考えています。
posted by 塾長 at 09:21| その他