2012年01月30日

天まで届け、自然との共生!

第5回目の住環境(伝統木造)フォーラムを1月28日に開催しました。定員20名の少数のフォーラムです。
 前日の夜は雨でしたが、当日は晴れてくれました。今回は特に心柱や夢殿を持つ意味、伝統構法と在来軸組み工法の違い、住み手の暮らしぶりなどを中心にお話しと説明を行いました。

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【フォーラムの様子】

 まず、沖縄の木造住宅の現状を話しました。新設木造住宅着工率はずっと1%くらいですが、本土の住宅メーカーの攻勢が始まっていて、昨年は若干増えたようです。しかし、ほとんどはプレカット。沖縄に限らず、最近の木造住宅はリフォームも含めて、日本全国プレカットのようです。
 柱は上下短ぼそ、小屋組は京呂組。仕口は金物で補強します。京呂組は、柱に桁をのせて、その上に小屋梁をのせます。・・・「載せる」のです。

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【京呂組と折置き組の違いを説明中。写真に見えるのは、折置き(下り置き)組の見本】

 私が設計する家の柱は上下長ほぞ、上部は重ねほぞなので短ぼその10倍くらい長くなります。小屋組は折置き組。柱に直接小屋梁が掛かります(渡りあご)。今回も、柱間が遠いところもあるので、柱の上に敷桁を通して小屋梁を受けます。その上に軒桁を通します。
 ここでは、「のせる」のではなく、「差し」ます。胴差し(2階の外回りの梁)、差し鴨居(かもい)、差し框(かまち)という名を使います。つまり、上からただ載せるのではなく、「差し」て組むのです。

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【下部を切り、10mの心柱が宙に浮いたところ】

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【見事に心柱が宙に浮き拍手の中、喜ぶ。左:尾方棟梁、中央:建て主さん、右:私】

 軒桁に小屋梁を蟻(あり)掛けで「のせる」やり方は、梁の欠損が多いので中央で梁が下がる恐れがあり、また、水平の強い引張力が働くと蟻の部分が壊れる可能性もあります。その点、材料もたくさんいるし、手間もかかる折置き(「下り置き」とも書く)組は、梁の断面欠損が少なく、柱に直接小屋梁を掛け、柱のホゾを差すので、当然、強くて長持ちする構法です。

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【心柱の真下からみたところ。八角形の組み物が二重、三重に見える】

 この家は耐震(筋かい入り)、制震(心柱)、免震(石場立て)の3つの要素が融合しています。伝統構法は、基礎が礎石(石場立て)で軸組みに貫(ぬき)が入り、小屋組みは折置きとし、躯体(くたい)には金物・釘は使わないものだと考えています。(仕口・継ぎ手は込み栓(せん)打ち)
 ただ、釘は法隆寺でも「和釘」が使われているので、決して釘を使わないというのは、絶対条件ではありません。

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【「夢殿」部分。八本の陸梁(りくばり)は心柱の中央で「雇いホゾ」でつながり、一体化している】

 何を持って、伝統構法というのかと、自問自答しました。結果は「自然に逆らわない組み手」ではないかと考えます。
 日本は法治国家ですので、法律に従わなくてはなりません。したがって、仕方なく筋かいも入れます。(自然力に対抗する耐震構造)しかし、一部は礎石にヒカリ合わせる石場立て(自然の力を逃がす免震構造)とし、心柱を中央に入れて地震や台風の揺れと逆に揺れる制震構造も取り入れました。3階部分の「夢殿」は心柱を吊る役割や縦の通風がありますが、風当たりをなるべく避ける八角形としました。

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【全景】

 沖縄県で最古のRC造で県の文化財になっている、大正14年建築の旧大宜味村(おおぎみそん)役場の2階部分の村長室も(設計は同じ熊本出身の清村勉氏)のRC造で八角形です。

 自然力と戦うのでなく、自然力を「避ける」「逃げる」「よける」のです。強大な台風や地震、津波に勝とう!などと考えるのは、人間のおごりです。一定の自然の脅威に耐えれば良いのです。
 「火災」や「台風・地震」、「シロアリ」などの木造の課題については、危機管理能力を発揮して対応すれば、十分長生きする家になるし、住み手の感性も高まります。

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【礎石は近くの鉱山から・・・】

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【雨水を保水する石灰岩。地下水として糸満市内に流れ出る。この琉球石灰岩の山から見たら、人間の小さいこと・・。砕石としてコンクリートの中に埋もれるだけではなく、礎石として生かし、少しでも保水して欲しい】

 総じて言えば、「自然との共生」を実感できる家と言うことになります。どれだけ綺麗事を言っても、自らの家が虫一匹受け入れず、機械を使って空調をコントロールしていては説得力がありません。


 私のめざす住まいは、自然との共生・調和。快適・便利、簡単・安全な家は、住み手に内在する機能を劣化させるばかりではなく、自然環境の破壊にもつながります。これまでの自然観や価値観を見直し、人間も自然の営みに沿うような暮らしをすることを願ってやみません。

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【近くの長谷寺で鐘を突く。工事の安全と自然との調和を願って・・・】
posted by 塾長 at 19:25| 建築