2012年09月03日

台風15号から学ぶ!

 8月26日夜9時ごろ、台風15号が沖縄県北部に上陸しました。台風が近づくに連れ、気象台や報道から出される情報は、「風速50m、最大瞬間風速70mの戦後最大級の超大型台風」でした。

 さすがに、繰り返される台風情報の脅威に、伝統木造建築の設計を手がけるものとしては、多少の不安もありました。26日の日曜日の朝から風が強まりました。我が家は布基礎にアンカーボルトで土台でつなぐ床組みではありません。石灰岩に柱を立てる礎石基礎(石場立て)です。
 したがって、強風が吹くと家は揺れ、浮きそうになります。屋根や床、壁の重みとのバランスで立っています。筋かいは1本も入っておらず、貫を通した軸組です。小屋組は学習棟を除き、折置き組です。学習棟は京呂組ですが、宙に浮く心柱が入っていて、バランスをとっています。4棟いずれも、いわゆる、柔構造です。

家から見た.jpg


【お母屋のベランダから見た台風時の風景。台風が進路の東を通ったので、来るときは南風、次第に西から南風に変わるのが分かる。】

 設計した家のなかで、一部雨漏りしたところがありましたが、家の崩壊などはありませんでした。特に、山の中腹にあって風の通り道に建てた木造2階(PH付き)の住宅は、よくぞ、あの強風に耐えてくれたと思います。
 PHは八角形とし、いずれの方向からの風も逃がす工夫をしています。沖縄の住宅は基本的に平屋です。ところが、米軍基地に摂取された影響もあると思いますが、狭い敷地が多く、そこに木造の心地よさや健康面を考慮して、RCではなく木造で建てたいとの要求があります。日本の木造住宅の基本は水平性(平屋)、融通性、可変性、自然との調和です。

雨戸.jpg


【強風で雨戸がしなる。手前のガラス戸も割れそうにしなる。こどもたちが内側から押さえていたが、途中で建具も柔構造と思い、ガラス戸を少しだけ開けた。すると、外からの風圧が分散し、ガラス戸はしならなくなった。】

 しかたなく2階建てとなりますが、そうなると、風や雨の対応が難しくなります。つまり、屋根で覆われた平屋とは異なり、壁と屋根の納まり(つなぎ目)によほど気を使わないと、雨漏りの原因になります。
 特に、伝統構法で壁を板張りにすると、隙間から雨が入り込みます。しかし、もともと風や地震の力を無数の隙間(クリアランス)によって吸収・分散する工法です。

タチガー倒木.jpg


【裏山にあるタチガー(湧水地)周りの点検。ギンネムの枝が折れていた。我が家の敷地もアカギの大木が折れた。】

 虫の侵入を許容する日本人の自然観を取り入れた柔構造は、虫も風も雨も入り込むのです。それを雨一滴、すきま風ひとつ許さないと言うのなら、最初から気密性の高いRC造とし、開口部をアルミサッシにして、外部の自然を排除する西洋的な家づくりをすべきです。
 昔の家にはガラス戸はありません。雨戸の内側に紙貼り障子があるだけです。家は雨風をとりあえずしのぐ器でした。内外の温度や湿度はほぼ一緒。冷暖房機などなく、夏は縁側を開け、蚊遣りをたきました。寝る時だけは蚊帳をつり、打ち水やウチワ、風鈴などで涼を呼び、冬は火鉢や炬燵で暖をとったものです。いずれも局所の冷暖房です。

増水した普天間川.jpg


【雨は少なかったが、普天間川を見に行ったら、増水していた。】

 自然に対抗して自然を押さえ込む西洋の自然観と、人も自然の構成員のひとつとして、自然との共生・調和する日本的な自然観とはまったく逆です。最近、木造住宅が沖縄でも見直されて普及しつつありますが、考え方の土台がなく、木造のいいとこどりで建てる人が増えました。気密性の高い「RC造のような木造」や、カタログから出てきたような「規格住宅」が増えました。

 構造躯体に釘や金物を一切使わない伝統的な木造住宅と、規格化されたRC造的な住宅とを一所くたにされたらたまりません。
住宅は自らの価値観、自然観を表します。高所・大所から物事を捉え、場所が異なる地域に建つ住宅にかかる自然の力を時間をかけながらなじませていく努力を建て主は実行していかなければなりません。目先、小手先にとらわれず、大きな気持ちで全体を捉え、木造の文化や自然との調和の仕方を、住宅から学ぶのです。メンテナンスのいらないメンテナンスフリーの住宅が主流ですが、それは建て主にとって、捉え方次第では不幸と考えています。台風が来ても、地震があっても人工物である住宅を過信すると、危機管理能力が低下し、命さえ落とすことさえあるのは、先の東日本大震災・大津波で実証済みです。

 また、沖縄で2階以上の木造住宅を建てるには、相当の技術が必要とされます。特に、伝統構法の場合は、技術者が極端に少ない事情があります。例えば、錺(かざり)職人は沖縄にはいません。大事な2階の壁と1階の屋根の納まりなどは、錺職人の技術が不可欠です。また、瓦工事もRC造が多いためか、そもそも瓦で雨水を止めようという考えがありません。「瓦から漏るのは当たり前」と職人に言われたときは、唖然としたものです。沖縄の瓦屋は、瓦下地の防水シートで水を止めるのが常識なのです。

ぼくねんの作品.jpg


【夏休みの自由研究:小学一年生の朴然の作品。水陸両用の風力式自動車らしい(帆が動く)。六年生の長女は、琉球松をくりぬいて作った「起き上がり小法師貯金箱」貯まれば安定!がキャッチコピー。】

 このような木造住宅の職人意識、環境の中で、どのようにして本来の木造を普及させるのか、課題はたくさんあります。
しかし、多少、雨漏りやシロアリ被害があっても、なお、伝統的な木造で自然と共生しながら暮らしたいという人たちもいます。建て主も職人も設計者も、みんなでその対応に知恵を出すからです。
住み手、作り手に「自然との共生・調和」という共通認識があれば、これからも少数の方々とだけでも一緒にやっていきたいな、と思っています。
 なぜなら、私は建築は手法の一つであって、伝統木造建築を通して自然と人間が共生する考えや暮らしが広がり、人間性の高い社会を築くことを目的にしているからです。

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【次女・亜和(あや)の工作は、回る家・浮かぶ家。製作中1】

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【間取りも製作】

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【ほぼ完成。敷地は鋸屑を使って芝としたようだ。家が回るので、風や日当たりを調整できるらしい。その他にも、いろいろ工夫がしてあった。子どもたちは工作以外に、「クモの研究」(ぼくねん)、3年の麻衣は「アリの研究」、次女の亜和(あや)は「アヤヨシノボリの研究〜往復・8kmの旅」、長女は「身近な生態系と自然との共生」(論文)をまとめました。童話大会には4人とも出ます。1年とと3年は規定の童話、次女は「万然の奇跡」、長女は「幸せとは?」の作文をそれぞれ記憶して発表します。この他にも一行日記やがんばりノート、ラジオ体操、絵日記、読書各12冊読破など、毎日、エサあげのあとの時間をフル活用して夏休みを終えたようです。長女は沖縄タイムスの環境調査隊にも毎週通ったので大変だったかもしれません。】
posted by 塾長 at 12:25| 建築