2013年11月06日

心柱探しの旅!

 11月3日、北中城村の比嘉邸に使う心柱を探しに、比嘉さん親子とともに沖縄を出発しました。「龍の昇る家」は、地域に伝わる龍神伝説も相まって、役者が揃いつつあります。
 自然との調和は、「言うは易く行うは難し」です。住まいづくりでこれを実践するには、描き手も造り手も住まい手も、みんな共通認識が必要です。これまでも「自然との共生・調和」という建築哲学で設計・施工してきました。
 つまり、住み手ができた住まいで自然に逆らわず、自然を楽しみ、自然の脅威を感じながらつつましく暮らすことです。これまでの住宅もベニヤやビニールクロスなどの新建材は一切使っていません。使うのは、自然に戻りやすい石や土、紙、木、水などの自然素材です。

仙人が居そうな綾町の山並み北綾川.JPG


【心柱を探しに行ったのは、宮崎県綾町。北綾川は熊本県多良木町が水源と聞いて、縁を感じました。仙人が居そうな山だなぁ」というと、同行した高橋氏は「仙人が万人います」と返しました。そのくらい幻想的な風景でした。】

手入れされた人工林.JPG


【枝打ちなど手入れされた人工林の杉林。心柱には野性的な枝付きの杉を求めている。】

山道.JPG


【奥に入ると、湿気が90数パーセントの森が続く。神様が宿っていると思った。】

南向きの枝.JPG


【綾町に行って最大の学習は、この柱との出会い。枝が全体にバランスよく張っている木を探したが、地元の空師・黒木純一さんは、「枝は陽の当たる方に伸びますから・・・」とひと言。頭をガーンと打たれたようだった。つまり、バランスよく見栄えのいい枝ぶりを求めるのは、「人間中心」的な考え方に他ならないことに気付いた。山の北にある木は北東に、西にある木は南西に枝を張る。従って、部屋の中央に立つ心柱は、育っていた方向に建てれば、それが一番自然だし、強度も出る。木材の適材適所の使い方はここにあった。】

説明中.JPG


【そのうえで、設計趣旨を空師の黒木さんに説明した。木の形や癖をそぎ落として製品化する今の木材の使い方では木が生かされていないことや、曲がった木を使いこなすのが大工さんの技術であり、それを生かすような設計をすることが、日本の山を守り、技術を継続することにつながることなどを一生懸命話した。それを理解してくれたあと見せていただいたのが、この杉の木であった。】

枝付き木.JPG


【そしてやっと出会った心柱になるイメージの杉の木。沖縄からはるばる探しに来た甲斐があった。生きている木。大切にしなければ・・・。木材の産地を知る建て主は少ない。きっと、何十年、何百年と今度は家の守り神として生きてくれると思った。】

見つけた心柱.JPG


【少し安心したのでみんなで記念撮影。前列は比嘉淨治さん親子、後ろがみんなの気持ちをつないでくれた旧友の高橋武則さん(前宮崎県建築士会副会長)、後列左から空師の(有)照葉林業の黒木純一社長、私、その右が内田勉棟梁。撮影は、永田村衛門製材所の永田社長。】

 木組みも躯体(骨組み)には金物や釘は使いません。相性が悪いからです。二重土台や折置きの小屋組のため木材使用量は通常の軸組の2.5倍、手間も3倍ほどかかります。加えて、その家や地域にふさわしい物語を導入します。お金はかかりますが、坪単価が2倍になることはありません。

間棹の説明.JPG


【次の日、大工さんが切込み中の作業場を見学。「難しい仕事なので間竿(けんざお)が3本もいりました」と内田棟梁が建て主に説明。】

墨付け1.JPG


【墨付けされた木材。丸太が多いので墨付けも面倒。しかし、機械加工ではできない木の性格を生かした木組みなので、しなやかで強い柔構造ができる。】


切込み中1.JPG



【切込み中。1本1本手作りで組み手を作る。】

大工道具.JPG


【伝統構法は職人だけでなく道具も現場に呼び寄せた。機械力や化学力に頼ると、人間の機能は劣化する。それは農業とも共通する。世界に誇れる日本の伝統技術を継承するには、建築士が手仕事で図面を書くことから始まる。「今の日本の建築士はカタログ建築士」と揶揄したら、同じ建築士の高橋氏は「いやいや、スマートフォン建築士ですよ」と言った、そのくらい、規格化した住宅に文化などあろうはずがない。ただ、施主の要望ばかり聞く建築士が多すぎる。建築哲学、自然観、人生観はどこへ行ったか?魂のない家の乱立は嘆かわしいばかりだ。】
 
 

 そして今回のテーマは「龍神物語」です。

 太平洋に向かう中城湾(なかぐすくわん)から昇りあがった龍が、荻道(おぎどう)にある湧水(タチガー)を通って我が家の裏山を下り、安谷屋(あだにや)辺りを回遊して仲順(ちゅんじゅん)のナスの御嶽(うたき)に入っていくという龍神伝説です。
 この龍は薬水をもたらすと言われ、現実、タチガーの水を飲んで癌(がん)が治った人もいます。

 比嘉様の敷地は龍の通る道になっており、南西から北東に向けて地形が上がっていますが、地形を変えず地形に沿った設計をしました。従って、屋根の棟も一部昇り棟とし、最上部のロフトの方形(ほうぎょう)の頂点には宝珠を乗せてあります。宝珠に向かって龍が昇るイメージです。
 そこで、昇り棟には「昇り竜」をあしらい、玄関壁には龍の鏝絵(こてえ)、雨端(あまはじ)の柱が載る礎石には龍を彫る予定です。

施主あいさつ.JPG


【施主挨拶。「龍の昇る家」を支える熊本の職人集団が勢ぞろいした人吉市の「旅館芳野」の一室。ここは登録文化財でもある。左から二代目竹下建具製作所社長、成松左官さん、竹下建具製作所三代目予定の裕一さん、右奥、礎石に龍・カメ・カエルを彫る徳永大工さん、明治時代の創業、老舗の永田村衛門製材所(2名)、内田棟梁の面々。】

doc20131106165102_001.jpg


【敷地の地形は南西から北東に上がっている。建物も地形に合わせた。高い部分のロフトは方形(ほうぎょう)で、最上部に宝珠(ほうじゅ)が鎮座する。その宝珠に向かって下段の屋根の棟にある龍が昇る。登り棟の端には龍の鬼瓦。「藤本鬼瓦」の手製となる予定。その下絵。】

鏝絵の龍を持つ成松氏.JPG


【わざわざ熊本市から駆け付けてくれた成松左官さん。鏝絵の参考にと持参したのは龍。】

球をくわえた龍.JPG


【よく見ると、龍の口には玉が・・・。細かな手仕事。これなら素晴らしい鏝(こて)絵ができると確信した。】


漆喰で作ったアユ.JPG


【漆喰で作られたアユ。これも成松さんの作品。】

鳥とお盆.JPG


【すると、集まった職人さんが手作りの作品を出し始めた。まるで展示会の様相。内田棟梁はケヤキとヒノキで作ったお盆、徳永大工さんはニワトリの一刀彫り。携帯電話の画像には、これまで作ったカエルや河童の作り物が・・。やる気満々の職人さんがたくさんいて、力強くなった。】

鳥の彫り物.JPG


【ニワトリの一刀彫り。すごい!】

 昇り龍の鬼瓦は、熊本城の鯱(しゃちほこ)を作られた藤本鬼瓦様、玄関の鏝絵の製作には、下絵が本永(旧姓宮城)愛様、左官仕上げは昭和50年の技能五輪全国大会で第1位になった成松徳雄様、礎石の彫り物は徳永繁信様がそれぞれ担当します。

 これに「空師」(そらし)と言われる宮崎県綾町の黒木純一様がひと肌抜いでいただくことになりました。龍のように大木の間を駆け登り、枝打ちや伐採をする業師です。

 龍神と水神は表裏の関係があります。北中城村(きたなかぐすくそん)の龍神の道は、水神の道でもあります。平成の名水百選に認定されているタチガーの水脈は、比嘉様の敷地までつながっていて、まさに「神の道」でもあります。
 先日、地盤改良工事の際、湿っぽかった場所を掘ってもらったら、わずか2メートルのところから水が湧いてきました。その後の雨の影響もあって、今の水位は地盤から65pまで上がっています。きっと、神様からの贈りものでしょう。家の完成までに、井戸として整備したいと思います。

新井戸.JPG


【タチガー脇に林間学校用の洗たく場を作った時も偶然、鉄棒を突いたところから水が湧いた。今回も、地盤改良の時湿ったところを掘ったら水が湧いてきた。神の道は水・龍の道。家の竣工までに井戸として整備する予定。】

 水や森に感謝し、大切にして未来に引き継ぐことは、現世代の責任です。目の前の快楽やおぼれることなく、人間が自然界の一員として自然の営みに逆らわず、謙虚に生きていくことを家づくりの中に取り込んでいきたいと思っています。

綾町自然生態系農業認定区分け.JPG



【綾町の物産館に掲げてある有機野菜の区分け表。「金」は完全無農薬。我が家は米も無農薬。食住で安心して暮らせるのはありがたい。】


無農薬野菜1.JPG


【綾町は有機野菜で有名。俺が俺がではなく、地域ぐるみで土壌や水を汚さない農業を長年掛けて達成。冬にヒマワリを無理やり咲かせて喜んでいる北中城村も綾町を見習ってほしい。価格は決して高くない。むしろ安かった。帰ってからソーメンを食べたが、しょうがの味も本来の味を出していた。綾町の魅力は木材だけではない。人も自然も虫たちもみんな元気!】

お土産.JPG


【お土産は無農薬野菜に加え、朴(ほう)とヒノキのまな板や杉の落し蓋など。朴は長男の朴然(ぼくねん)の名前に採用した漢字。包丁のような鋭利な刃物で傷ついても、元に戻る打たれ強い人間になってほしいという願いが込めらています。無農薬野菜もふくめ、本物はやはりいい。】

球磨焼酎で交流.JPG


【二次会は球磨焼酎が潤滑油。立派な仕事をみんなで誓った。】

テディべアんUの徳永真利子ママと徳永さん.JPG


【おまけのおまけ。石の彫り物をつくる予定の徳永大工さんの娘さんが経営するスナック:テディベアU(人吉市紺屋町)この写真のように、親子の家族愛を見せていただきました。きれいでしっかりしたお方でした。】
posted by 塾長 at 20:04| 建築